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最小の費用で最大の効果を上げるための調査・分析の方法

執筆者の写真: ATLATLATLATL

更新日:2019年9月13日



「広く細かく調べよう」は多くの無駄が生じますが、 調査会社にとってはオイシイので無くなりません。

以前、大手の調査会社より、「クラアントからこんな要望をいただいたのだが、アトラトルさん調査できますか?」と問い合わせをいただきました。


「東南アジア4カ国で高級ヘルスケア商品を百貨店、ショッピングモール、GMSに出店する計画を立てたい。そこで、百貨店・ショッピングモール、GMSごとの売上高TOP5のチェーンのTOP10の店舗におけるTOP10のブランドの販売金額と販売数量を5年分欲しい。」


これを文字通り調べようと思ったら、国ごとに大手流通企業の流通形態別の売上高を10〜20社分(合計で数百の流通形態)調べてそれぞれのTOP5を出し、さらにそれぞれの数十〜数百の全地域の店舗別の売上高を調べてTOP10を出し、さらにさらにその中の数十〜数百のブランド別売上高と販売数量を調べてTOP10を出すということを5年分行うことになります。


すなわち、各小売会社の機密情報に該当するレベルの細かなデータを国中で網羅する必要があります。公表データではまず存在しません。(新興国の場合、機密に近いデータをお金で買えることがありますが、多くは断片的です)


その調査会社ではここまでの海外調査はできないとのことでした。確かに、これぐらい広範囲で細かい粒度だとデータが存在しない可能性が高いですし、データが存在するとしても取得費用や推計の手間が膨大にかかることが予想されます。


余談ですが、大手の調査会社の営業担当の方に「これだけ広範囲で細かいと、数千万円単位になるかもしれませんよ」と言うと、「数千万円に数十パーセントの営業マージンをのせたら、今期のノルマ達成!」と鼻の下が伸びて、「お客さんが予算を持っているかもしれないので、要望通りに見積もりを出してください」と言われます。調査スコープが大きいと調査会社の営業担当者のインセンティブが上がるため、「ここまでのレベルのデータが本当に必要なんですか?」という素朴な質問をしない構造になっています。



事前に詰めるべきことを詰めることで、調査の効果と効率を同時に上げられます。

このような「広範囲かつ詳細なデータが欲しい」という場合、その前段階で詰めるべきことを詰めていないことがほとんどです。調査する前に詰めるべきは、

  1. 何を決めようとしているのかを具体化する

  2. 現実的にとりうる選択肢を洗い出す

  3. 選択肢を選ぶ基準を明確にする

でした(前回のブログを参照)。



今回の目的は「出店計画を立てたい」です。では、なぜ出店するかといえば、出店によって利益を得るためですが、利益を上げるのが難しいのは、富裕層がたくさん来店してたくさん買い物をするような百貨店やモールは出店費用や家賃が高く都市部にあるので人件費も高い。一方、出店費用や家賃、人件費の安い郊外は、高額商品の売上はそれほど見込めない、というトレードオフが存在するからです。


したがって、何を決めようとしているのかと言えば「このトレードオフの構造の中で、利益が出るであろう物件(に対する出店)」ですね。


今回はそのための候補先を見つけたいということなので、現実的にとりうる選択肢を洗い出すというのが調査の目的ということになります。


調査では流通チェーンの機密情報などを不正に取得することはできませんので、そういう物件を見つけるためには、どのような外形的情報があれば良いか、を明らかにする必要があります。


そこで、お客様先に訪問しディスカッションをした結果、利益が出そうな店舗のスクリーニング条件は、以下のような結果となりました。

  1. 高級DCブランド◯◯が出店している →富裕層向けである

  2. 空き店舗率が◯%以下 →来店者が一定以上いる

  3. ベンチマークしているいくつかのブランドの出店数が◯店舗以上◯店舗以下 →高級ヘルスケア商品を買いに来る消費者がいるが、競合が多すぎない

  4. ベンチマークブランドの商品の価格が◯ドル以上 →高級品を安売りする必要がない

  5. 出店費用と家賃が◯ドル未満 →損益分岐点が低くなる


スクリーニング条件が決まったので、以下の方法で調査を行うことにしました。

  • 高級ブランドの出店店舗、ベンチマークブランドの出店数:デスクトップリサーチ

  • 空き店舗率、出店費用と家賃:現地の不動産業者へのヒアリング

  • ベンチマークブランドの商品価格:現地への訪問調査


当初の「細かく網羅的なデータを5年分欲しい」に比べたら、格段に調査スコープが絞られ、コストが下がりました。また、当初のご要望だと「売れている店舗はここ」とは言えますが、利益や投資対効果の観点がありませんでした。


言われてみれば当たり前のことですが、調査の目的に立ち返り、何がどうだったら出店するのか?を先に考えることで、調査の効果と効率の両方を上げることが可能になります。


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